探偵とは

探偵

いざ探偵に相談してみようと思っても、

「探偵とはいったい?」

「何ができるの?」

「資格とかあるの?」

などという疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思います。

ここではできるだけ現実の「探偵」という職業について説明してみたいと思います。

1.探偵という職業

現実の探偵は映画やドラマの筋書きとは別

探偵というと、映画やドラマ、小説、マンガなどの中の名探偵といったキャラクターを想像する方も多いかも知れません。

迷宮入りした殺人事件のトリックを、名推理によって次々と見破る名探偵の姿に興奮した経験を持つ方は少なくないでしょう。

また一方では、犯罪者の手足となって情報を集めたり、脅迫、強要する様なアウトロー的な探偵もドラマや映画などでは登場、全く別な悪いイメージの顔も存在しており、もしかしたらこの悪質なほうの探偵の印象を持っている方もいるかもしれません。

しかし、今日の日本で活動している現実の探偵は、各都道府県の公安委員会に届出をしており、審査や管轄警察署の立ち入りなどを受け、探偵業法を遵守し探偵業を正式に営んでいます。

探偵の仕事

現実の探偵では殺人事件などの刑事事件に関与する事は基本的にありません。

犯罪の証拠収集や企業の機密漏洩事件などに関わることがあったとしても、業務の中心は民事事件や個人の悩み、不安の解消の為の調査となります。

浮気調査、素行調査、結婚調査、所在調査などといった依頼に対して、足を使った尾行や張り込み、聞き込みなどによってコツコツと情報を集め調査していくなど、地道さが要求される職業です。

また、勤務時間もその日によって異なることが多く、終了時間は調査内容、尾行調査対象者の行動でも異なります。

例えば浮気調査で夕方の退社時間から調査が始まっても、対象者が外泊すれば調査員も外泊先の近くで徹夜の張り込みとなります。

必然的に土曜、日曜、祭日も関係ない事になっていきますので、プライベートな約束はなかなかできないのがつらいところです。

尾行、張り込み、聞き込みなどの調査稼働時間だけが勤務時間というわけではありません。

相談者や依頼者への対応業務、調査報告書の作成、新規調査の下調べ、カメラやレコーダーなどの調査機器の設備など細かい作業の他、雑用などももちろんあります。

2.探偵と興信所の違い

近年では「探偵」でありながら「興信所」と同時に名乗っているケースが多くみられます。

一体どっちなのか?という疑問の前に、そもそも「探偵」「興信所」とは何なのか?という疑問を感じるかもしれません。

探偵

探偵は「探偵業法」の条文により定義づけされています。

他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞き込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務

要約すると「依頼者から依頼を受けて、対象者を尾行・張り込み・聞き込みその他の方法を用いて調査し、その結果を依頼者に報告して報酬をもらう職業」が探偵です。

この探偵業を営むには営業所を管轄する都道府県公安委員会に届出をする必要があります。

興信所

では「興信所」は違うのかというとそんなことはなく、興信所と名乗っていても尾行や張り込みの調査業務を行う興信所は探偵業法で義務づけられている届出を行っているのです。

但し、興信所には「興信所業者が講ずべき個人情報保護のための措置の特例に関する指針」という個別に規定されたガイドラインがあり、同文には興信所の定義が以下のように記載されています。

他人(個人に限る)の生命、身体、財産その他の権利利益の保護のために必要な人の所在又は行動に関する事項について、当該他人の需要に応じて調査し、その結果を当該他人に報告する業務

同文には興信所について特に調査を行う手段や届出の義務等の記載は見られず、個人からの依頼に限ると記載されています。

探偵は「人」、興信所は「企業」?

上記の内容と齟齬が生じますが、以前は探偵は「人」に対する調査、興信所は「企業」に対する調査という区別がされていたようです。

探偵の調査手法は、尾行や張り込みなど対象者を外側から調査する外観型調査手法と呼ばれます。

これは基本的に身分や名前、姿など存在自体も対象者に知られないように調査を行う方法です。

自分が探偵であるなどとは、ごく稀なケースを除き、調査に関わる他人に伝えることはなく、これは今でも変わっていません。

一方、興信所は、電話や実際に会うことなどによる聞き込み調査が主体であり、内観型調査手法と呼ばれていました。

興信所の社内や調査員のデスクの上だけで調査が終了する場合もあります。

探偵と違い、興信所の場合は調査員が相手に名刺を渡す、つまり身分を明かして話を聞くこともあります。

ただし、現在では、こうした明確な区別はなくなりつつあります。興信所と名乗る業者が探偵と同一内容の業務を行っているケースが多いです。

結論としては、現状では探偵と興信所を分けて考える必要はあまりないと言えるでしょう。

 

3.探偵の社会的地位・イメージは?

海外と比べると探偵の地位は低い

探偵という職業の日本における社会的地位は、非常に高い社会的地位を得ている欧米などに比べても、とても低くなっているのが現状です。

例えば、アメリカでの探偵は元FBIなどがなる職業でもあり、特別に権利を与えられているケースもあるようです。

一方、日本の探偵はあくまで一民間業者の人間であり、届出こそ必要ですが資格があるわけでもなく、業務を行うにあたり特別な権利を持つわけでもないです。

実際に社会的地位が低いとなると、探偵がどのようなイメージを持たれているかという点が重要になります。

探偵というと映画や小説、ドラマやマンガなど作り話の中の職業であって、現実には存在しないとさえ思われている場合もあります。

一般的には、これら映画やドラマ等のかっこいい探偵のイメージが持たれており、探偵業界内部で働く人間からすれば、現実の探偵との大きな落差は皮肉としか言いようがありません。

探偵がメディアに出る時

ストーカー被害にかかわる事件をはじめとして、たびたび探偵がニュースで報道されるような事件を起こすことがあります。

探偵社の代表者がマンションに立てこもりモデルガンで威嚇する騒ぎを起こした不可解な事件がありました。

債権回収の依頼(そもそも弁護士法違反)を受けた探偵事務所が、料金だけ前金で受け取って調査を何も実施しなかったという詐欺で逮捕された事件もありました。

探偵という職業の肝である「信用」を大きく落としてしまう事件です。これらを業界では比較的知名度があり業務歴の長い探偵社が起こしてしまっています。

このような一部の極端な例は別にしても、業界では大手と言われる探偵社でさえ依頼者とのトラブルや裁判沙汰が絶えないという話も聞こえてきます。

非常に残念なことですが、少しでも現実の探偵に対する情報を耳にしたことのある方は、怪しい、胡散臭い、料金ばかり高そう、などのマイナスなイメージを持たれていることも少なくないのではないでしょうか。

 

4.探偵になるには

探偵になるには、大きくわけて以下の3つの方法があります。

ちなみに探偵になるために絶対に必要な資格等はなく、原則として誰でも探偵になることができます。

1.探偵(調査員)を募集している探偵事務所に採用される

調査員募集をしている探偵事務所の面接を受けて採用されるのが最もオーソドックスな方法です。但し、事務所ごとに調査員の待遇や方針に違いがあります。

新人がお客さんである依頼者対応を行うことはまずなく、現場調査員の見習いから始まるのが普通です。

雑用はもちろんのこと、宣伝用のチラシ配りなどを課せられるケースもありますので、よく話を聞いてから決断したほうがよろしいでしょう。

2.探偵学校に入学する

一部の探偵社は、探偵になるための学校を運営しています。

学校では探偵業務に関する知識や技術を学ぶことができますが、学校によって学習期間や学費に違いがあり、また、学校に入ったからといって必ず探偵社に採用されるとは限りません。

中には自社の探偵学校に入学し、卒業までの課程を修了することを採用の条件としているところもあります。

もし探偵学校に入学する場合は、よく考えてから入学した方がよろしいでしょう。

3.探偵事務所を開業する

何処かの探偵事務所に所属するのではなく、自身で探偵事務所を開業する、という方法もあります。

但し、探偵業法により、個人法人にかかわらず探偵業を営む(探偵と名乗る)場合は、管轄の警察へ開業の届出をしなければなりません。

また、欠格事由というものがあり、下記に記載する事項に該当する人物・法人は探偵業を営業することはできません。

(1)成年被後見人、もしくは被保佐人、または復権していない破産者

(2)禁錮以上の刑または探偵業法違反による罰金刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者

(3)最近五年間に営業停止処分に違反した者

(4)暴力団対策法に規定する暴力団員、または暴力団員でなくなった日から五年を経過していない者

(5)成年者と同一の能力をもたない未成年者でその法定代理人が各号に該当する場合

(6)法人でその役員のうちに(1)~(4)に該当する者がいる場合

探偵業の開業は届出のみで可能なのでハードルは低いほうと言えます。

しかしその分、業界に参入している探偵事務所の数が多いため、何の実績もない新しい探偵事務所が依頼をもらうことはかなりハードルが高いです。

 

5.探偵と別れさせ屋の違い

「別れさせ屋」という業者について聞いたことがある方もいるかと思います。

別れさせ屋は、報酬をもらって対象者とその交際相手を別れさせる工作を行う業者です。

例)

・夫と浮気相手と別れさせて関係を終わらせたい

・元恋人から今の彼女を別れさせて寄りを戻したい

・想いを寄せる男性がいるが恋人がいるので別れさせたい

・子供に結婚を約束した交際相手がいるが自分たちが気に入らないので別れて欲しい

上記のようなケースが、別れさせ屋への依頼の対象となります。

工作員が対象者に接触し、恋愛感情が工作員に向くように仕向ける、というのが別れさせ屋の主な工作手法のようですが、 実はこの別れさせ屋、「探偵事務所」であることを名乗っているケースがよくあります。

別れさせ屋が探偵事務所を名乗る理由は、工作を行う上で対象者を尾行して行動を調査する必要がある、 そのためには探偵業の届出をしなければならない、ということらしいのですが…。

探偵業の届出をしている以上、本業が別れさせ屋でも同時に浮気調査や素行調査を行う探偵事務所として営業しているケースもあります。

ここでご注意いただきたいのは、浮気調査や素行調査を依頼したい方は、本来の「探偵事務所」に依頼すべきだということです。

探偵と別れさせ屋の調査の違い

別れさせ屋の仕事内容から考えると、尾行は工作を成功させるための情報収集として行っていますが、 探偵の尾行は、証拠を収集するための尾行であったり、居所を判明させるための尾行など、依頼者の要望により目的が変化します。

つまり、仕事の内容の性質に違いがあるため、浮気調査や素行調査の依頼をお考えの方が、 わざわざ工作活動を主業務としている別れさせ屋に証拠収集等の調査を依頼するメリットはないのです。

逆にもし別れさせ工作を探偵に依頼しようとお考えの方がいるのであれば、そもそも探偵には工作を依頼できないということをご承知おき下さい。

探偵は別れさせ工作はしない

探偵業界では以前から別れさせ工作を規制する方針を打ち出しています。 別れさせ行為が、人の意思を操る、公序良俗に反する法律的に違法な行為との指摘がなされたからです。

また、別れるように要求する行為等が、弁護士でない者が報酬をもらって交渉を行ってはならないとする弁護士法違反に該当するケースもあります。

 

6.探偵に必要なもの

実際の探偵はどういう人間たちだと思われるでしょうか?

ドラマや映画の中では武術や格闘術に長けている場合があったりしますが、正直、格闘的な強さは必要ありません。(もちろんあった方がいいですが)

忍耐力

まずなんと言っても忍耐強さ。

張り込みをすると顕著に適応能力が見いだせますので、よく探偵事務所などでは採用の際のテスト的に使われることがあります。

張り込みでは何時間も立ち続けなければならないことがあり、立っているだけではなく視線も同じ場所に集中していなければならないのです。

周りの人や出来事に気を取られたりしていては、一瞬の対象者の動きを見逃してしまいます。

いかなる状況でも視線を外さずに立ち続ける忍耐力は探偵にとって不可欠な要素になります。

洞察力や臨機応変さ

機転や洞察力など様々な状況での適応能力が重要です。

ちょっとした動きから対象者の行動を予測したり、とっさに機転の利いた動きができます。

これは数多くの経験がなせる技で一長一短ではできる事ではありません。

パソコンや調査機材の知識

ビデオカメラを筆頭に探偵機材の扱い方の習得が必要です。デジタル化に伴いいろいろと新型機器が登場、複雑化しているものもあり、 すぐに対応できるように日頃からの修練や研究も重要なのです。

運転技術

尾行では対象者が車やタクシーなどを使用する時には、調査員も車やバイクを使用することが多いです。

運転に慣れていないのに車やバイクで尾行をすると事故を起こす危険があります。

雑学的な知識やトークスキル

探偵が行う調査業務は尾行や張り込みばかりとは限りません。聞き込みや潜入調査などの内偵調査もあります。

他の職業などになりかわり聞き込みする時には広い知識力が必要です。

探偵そのものにも探偵業法があり、調査においては刑法や民法、時には商法などの法律知識。広く浅く社会情勢を含む知識が求められます。